千葉県山武市で創業200年超の老舗「大高醬油(しょうゆ)」が携わったラーメン店が、2月10日に印西市の千葉ニュータウンにオープンする。東金市と旭市の会社の麺を使用するなど、具材も県内産を極力使用。同社とコラボして運営する松山商事(印西市)は「名物の少ない印西から、新しい千葉のご当地ラーメンを目指す」と意気込んでいる。
ラーメン店は「しょうゆらぁ麺 富士虎屋」。
印西市草深の国道464号(北千葉道路)沿いに開店する。付近は人気店が軒を連ねる「ラーメン激戦区」だ。
1804(文化元)年創業の大高醬油と、印西で焼き肉店を経営する松山商事がタッグを組んだ。
大高醬油は、醬油や調味料の多彩な商品展開で知られるが、本社に2022年12月、週2日だけ昼限定のラーメン店を開き、人気を集めている。営業部の鈴木勝己さん(51)は「醬油など商品単体だと限界が来る。ブランド化が必要」と狙いを語り、同社にとっても今回が初のコラボになる。
富士虎屋では、大高醬油の二段仕込み醬油を使った「黒」、特製醬油で魚介系のダシを利かした「白」が基本。チャーシューやタマゴも特製ダレで煮込んだ。
松山商事で専務として経営に関わる菰岡翼さん(39)は「他のラーメン店では味わうことができない、工場に行ったような醬油の香りと、濃厚な味わいが特徴」と胸を張る。
今回のコラボが実現したのは、菰岡さんの印西への熱い思いだ。
印西は、江戸時代、利根川の宿場町として栄えた木下(きおろし)地区があり、銚子から江戸へ醬油や魚を運んでいた。海から遠いのに地区を通る道には「鮮魚(なま)街道」の通称も残る。
近年は、国内外の企業が、北総鉄道・京成電鉄沿線に、データセンターを相次ぎ設置。人口は11万人超まで増え、民間調査の「住みたい街」などで全国上位の常連だ。
「それでも『印西には名物が何もない』と言われ、ずっと悔しい思いをしてきた」と菰岡さん。
松山商事では、利根川に構想を得た菓子「風船容器の水餅まる」を販売するなど、印西の名物づくりに取り組んできた。
商工団体でつながりのあった大高醬油に声をかけ、開業にあたる店員らが修業。1月30日にあった試食会には、市内の各種団体から大勢が駆けつけ、地域の期待の大きさを感じさせた。
両社とも、この店が成功すれば、多店舗展開も検討するという。
県内には「竹岡(式)ラーメン」(富津市)、「勝浦タンタンメン」(勝浦市)、「アリランラーメン」(長柄町・長南町)といったご当地ラーメンがある。菰岡さんは「山武や印西など北総の歴史を盛り込んだ一杯で勝負したい」と意気込んでいる。